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東京地方裁判所 昭和40年(行ウ)63号 判決 1970年9月29日

原告 豊道さと

被告 東京都

補助参加人 西武鉄道株式会社

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

原告は「東京都収用委員会が昭和四〇年三月四日原告に対し東京都市計画街路幹線街路放射街路第三号支線の一築造事業土地収用事件について裁決した損失補償額を一五、七五三、六五九円に変更する。被告は原告に対し一三、五九三、四七二円およびこれに対する昭和四〇年四月二日から完済にいたるまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、

被告は本案前の申立てとして「本件訴えを却下する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決、また本案につき主文同旨の判決を求めた。

第二原告主張の請求の原因

一  被告は東京都市計画街路幹線街路放射街路第三号支線の一築造事業の起業者であるが、その施行者たる東京都知事は昭和三九年二月七日都市計画事業決定の告示ののち、同年三月七日収用しようとする補助参加人所有の別紙目録記載の土地につき収用土地細目の公告をなしたうえ、収用による損失補償につき補助参加人および右地上に存在する別紙目録記載の建物に居住していた原告と協議し、これが不調となつたので、同年一一月一八日東京都収用委員会に対し右土地につき収用裁決を申請し、同委員会は昭和四〇年三月四日原告に対する損失補償を次表の内訳により二、一六〇、一六七円とする旨の裁決をなし、その通知は同月六日原告に送達された。

(内訳)

補償項目      補償金額

借家人補償   一、二三四、〇五八円

立竹木移転補償   一六〇、七三〇円

工作物移転補償    三二、四七五円

動産移転補償     五三、七三〇円

家賃差額補償    六一七、七四八円

移転雑費補償     六一、四四六円

二  しかし、右裁決の損失補償額は次の理由により正当な額といえない。

(一)  土地の賃借権についての損失補償の缺如

右裁決は原告に対し右建物の賃借権喪失につき「借家人補償」の名目で、一、二三四、〇五八円を補償すべきものとしているが、原告は右建物のみならず右土地についても賃借権を有したから、その喪失についても損失補償を受くべきである。

原告が右土地について賃借権を取得した経緯は次のとおりである。

右土地はもと皇室財産に属し、当時皇族の朝香宮であつた朝香鳩彦においてこれを借り受け、その地上に職員用官舎として右建物を建て、それ以来、右宮家の職員たる亀井においてこれを右建物と不可分一体のものとして使用していたものであるが、原告は昭和二三年五月三日頃亀井が他に転居した際、同人の妹たる縁故により朝香鳩彦から右土地、建物を不可分一体のものとして賃料一ケ月五六円の約で借り受けたところ、右土地の所有者たる国は右土地の転貸についてなんら異議を述べないで、これを暗黙に承諾した。

そして、右土地の賃借権の価格はその所在位置等からして建物の存在を考慮に入れても、その更地価格一九、六二八、七〇〇円(坪当り二三七、〇〇〇円)の七〇パーセントに相当する一三、七四〇、〇九〇円と評価されるから、右金額をもつて右賃借権の喪失についての損失補償額とすべきである。

(二)  立竹木移転による損失補償の不足

右裁決は原告に対し「立竹木移転補償」の名目で一六〇、七三〇円を補償すべきものとしているが、原告は右土地の庭園部分に樹木一〇九本を所有し、これを他に移植するのに左記内訳により現実に一九九、〇一五円を支出したから、同額の補償を受くべきであつて、右裁決額はこれに三八、二八五円だけ不足する。

右支出の内訳は次のとおりである。

項目               金額

人件費および工賃        九六、〇〇〇円

運搬費             二五、〇〇〇円

根巻虫除け材料一式       二〇、〇〇〇円

移転先借地費          五〇、〇〇〇円

雑費(作業員食事代、チツプ等)  八、〇一五円

(三)  工作物移転による損失補償の不足

右裁決は原告に対し「工作物移転補償」の名目で三二、四七五円を補償すべきものとしているが、原告は右建物に設置した白金局加入の電話を他局に移転することになつたから、工作物移転による損失補償としては右裁決額のほかに、右電話加入権の評価差額一四〇、〇〇〇円およびその設備移転費四、二〇〇円の合計一四四、二〇〇円の補償を受くべきである。

(四)  動産移転による損失補償の不足

右裁決は原告に対し「動産移転補償」の名目で五三、七三〇円を補償すべきものとしているが、原告は一般家財道具を移転するのに二七、三三〇円を支出したほかに、右建物にあつた原告の夫の所有する美術品一七一点を移転するのに左記内訳により現実に一〇〇、〇〇〇円を支出したから、その合計一二七、三三〇円の補償を受くべきであつて、右裁決額はこれに七三、六〇〇円だけ不足する。

右美術品移転に要した支出の内訳は次のとおりである。

項目               金額

梱包資材費(一点当り四〇〇円) 六八、四〇〇円

人夫賃             一〇、〇〇〇円

運搬費             一二、〇〇〇円

雑費(チツプ、食事代等)     九、六〇〇円

三  したがつて、右裁決にかかる損失補償額は右二の(一)ないし(四)において本来補償額に計上すべきものとして示した金額の範囲内たる一三、五九三、四七二円を不足する限度において正当性を欠き違法であるから、右裁決を右不足額の加算された一五、七五三、六五九円をもつて補償額とするように変更することを求めるとともに、被告に対し右補償の不足額一三、五九三、四七二円およびこれに対する収用後たる昭和四〇年四月二日以降完済にいたるまで五分の割合による遅延損害金の支払いを求めるものである。

第三被告の主張

(本案前の抗弁)

原告は都市計画事業の起業者たるべきは公共団体であるとして本件訴えの相手方に東京都を立てたが、土地収用法第八条第一項は同法にいう起業者とは土地を収用することを必要とする事業を行う者をいう旨を規定し、旧都市計画法(大正八年法律第三六号以下、単に都市計画法という。)第五条第一項、同法施行令第一条によれば、都市計画事業の施行者は都道府県知事であるから、都市計画事業の起業者はその施行者たる都道府県知事であると解すべきである。従つて、右事業のためにする土地収用に関する行政訴訟たる本件訴えの相手方は東京都知事でなければならない(土地収用法第一三三条第二項)から、東京都を被告として提起された本件訴えは不適法である。

(請求原因に対する答弁)

一  前掲請求原因一の事実中、被告が都市計画事業の起業者であるとの点を除くその余の事実は認める。同二の(一)の事実中、原告主張の土地の更地価格が原告主張の額であつたことは認めるが、原告が右土地の賃借権を有しないこと、原告の右賃借権取得の経緯および右土地の賃借権の価格が原告主張のとおりであることは否認する。原告がその主張の建物の賃借人であつたことは知らない。同(二)の事実中、原告が右土地の庭園部分にその主張の樹木を所有していたことは認めるが、その余の事実は右裁決の補償項目および金額の点を除き、否認する。同(三)の事実中、原告が右建物に白金局加入の電話を設置していたことは認めるが、その余の事実は右裁決の補償項目および金額の点を除き、否認する。同(四)の事実中右建物に一般家財道具のほか原告主張の美術品が存在したことは認めるが、その余の事実は右裁決の補償項目および金額の点を除き、否認する。

二  原告主張の裁決による損失補償額は正当である。

(一) 借家人補償について

右裁決は原告が右建物の賃借権を有するか否か定かでないまま一応これを肯定してその喪失による損失補償を認めたが、その際、原告の右土地の使用権を特別に考慮しなかつたのは次の理由による。すなわち、一般に建物を賃貸借の目的とした場合、その敷地は建物の使用に必要な限度において使用を認められるとともに、これを権利の目的とする賃借権その他の使用権が成立することはないからである。

(二) 立竹木移転補償について

右裁決は原告所有の前記樹木全部について移植費を「立竹木移転補償」の名目で補償すべきものとしたが、その金額は相当である。

(三) 工作物移転補償について

右裁決は原告の電話設備の移転による損失補償を「工作物移転補償」の名目による補償に含めて補償すべきものとしたが、その金額は相当である。なお、仮に原告が右移転により新たに電話加入権を取得するため差額の支払を余儀なくされたとしても、その支払によつてこれに相当する財産を取得したわけであるから、右支出は損失にはあたらない。

(四) 動産移転補償について

右裁決は美術品の所蔵状況および運送料の調査に基づき、トラツク代六、四〇〇円人夫賃一〇、〇〇〇円梱包資材費一〇、〇〇〇円、合計二六、四〇〇円を必要と認め、これに一般家財道具の移転費として起業者の見積つた二七、三三〇円を加えた五三、七三〇円を「動産移転補償」の名目で補償すべきものとしてのみならず、一般家財道具の移転費として計上した右金額にも美術品の移転費を含めて算出されているから、美術品の移転費としては、むしろ余分に補償されることになるものである。

第四補助参加人の主張

原告はその主張の土地建物については、なんらこれを占有する権原を有するものではなかつた。すなわち、原告はもと右建物に居住していた朝香宮家の職員の許に同居し、同人が転居したのちも引き続き事実上右建物に居住していたにすぎず、もとより独立して右建物を使用する権利を有するものではなかつた。従つて、原告は元来右土地、建物の収用による損失補償を受け得るものではない。

第五証拠関係<省略>

理由

一  本案前の抗弁について

本件訴えは都市計画法に基づいて行われる都市計画事業のための土地収用によつて生じる損失の補償について東京都収用委員会が原告に対してなした裁決に関する訴えであるから、土地収用法の適用を受ける(都市計画法第一八条第一項)ところ、土地収用法第一三三条第二項によれば、土地収用による損失の補償に関する訴えについては被収用者および起業者が互に相手方となるべき旨を規定しているので、本件訴えにおいても都市計画事業の起業者を被告としなければならないが、土地収用による損失補償に関する訴えは土地収用そのものに対する不服申立てではなく、単に損失補償に対する不服申立てにほかならないから、本来、補償金の支払を受くべき権利者およびその支払をなすべき義務者が互に相手方として訴訟の当事者となるべきであり、従つて右にいう起業者とは土地収用により補償金を支払つて財産権を取得すべき権利義務の主体をいうと解するのが相当である。

そこで、都市計画事業における起業者とは何人を指すかを考えてみると、都市計画法第五条、同法施行令第一条によれば、都市計画事業は原則として都市計画区域を統轄する行政庁がこれを執行すべきものとしているが、他方、同法第六条は都市計画事業の執行に要する費用は公共団体の行政庁が事業を行う場合にはその行政庁の統轄する公共団体が負担すべき旨を規定しているところからすると、同法は都市計画事業の土地収用についてはこれによつて権利を取得し、また被収用者に対する補償金支払義務を負担すべき権利義務の主体としては公共団体を考えているのであつて、その行政庁は単に公共団体の経済的負担においてその事業を執行する権限を与えられているにすぎないと解されるから、都市計画事業においてはその執行者たる行政庁の統轄する公共団体をもつて土地収用法第一三三条第二項の起業者というべきである。

そうだとすれば、原告が東京都を被告として本訴を提起したのは適法というべきであつて、これを違法とする被告の主張は採用することができない。

二  本案について

前掲請求原因中、原告主張の都市計画事業のため、補助参加人所有の別紙記載の土地につき東京都収用委員会の原告主張の損失補償をもつてする収用裁決がなされ、その通知が原告に送達されたことに関する事実は当事者間に争いがない。

そこで、右裁決による損失補償額の当否について検討する。

(一)  成立に争いのない甲第四五、第四六号証の各一、二、同第四七ないし第五〇号証、同第五一号証(丙第一号証。ただし、いずれも後記措信しない記載部分を除く。)甲第五二号証(ただし、後記措信しない記載部分を除く。)、同第五三号証(丙第二号証。ただし、いずれも後記措信しない記載部分を除く。)、甲第五一号証(丙第一号証)により真正に成立したものと認める甲第一号証の一、二、第二号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める甲第四九号証および検甲第一ないし第一〇号証ならびに原告本人尋問の結果を総合すると、右土地およびその周囲の土地併せて約一、三六八坪九合七勺(一二一九・七三平方メートル)はもと皇室財産に属し、当時皇族の朝香宮であつた朝香鳩彦がこれを無償で借り受け、その地上に同宮家の職員用宿舎として約一五棟の建物を建てたこと、そして、その居住者は終戦後朝香鳩彦との間で協議をした結果、毎月建物の広さに応じた一定の賃料を支払うようになつたこと、右建物のうち別紙目録記載の建物には原告の実姉の夫亀井安之助が居住し、原告が昭和二〇年頃から同居していたが、原告は昭和二三年五月頃右亀井が他に転居した際、右朝香から右建物を相当の賃料を支払う約束で借り受けて、これに居住していたこと、その敷地たる別紙目録記載の土地は従前から周囲を堀で囲われ、建物設置部分以外が庭園に造成されていて、原告は右建物居住に伴い自由に右庭園を使用していたことが認められ、甲第五一号証(丙第一号証証)、甲第五二号証、同第五三号証(丙第二号証)中、右認定に反する各記載部分はたやすく信用し難く、他に右認定を覆すに足る証拠はない。してみると、原告は右建物について賃借権を有し、従つてまた、これに伴い、その敷地たる右土地を使用することを許容されていたものということができるが、右土地の建物設置箇所以外が庭園に造成されていたからとて、他に特段の事情がない限り、それだけで右土地が右建物と独立して賃貸借の目的とされていたことを推認しうるものではなく、他にこの点を肯認すべき証拠もない。

原告は右土地について有した賃借権の喪失による損失の補償を缺く点において右裁決に瑕疵がある旨を主張するが、右主張を採用しえないことは自ら明らかである。

そして、右裁決が原告に対し「借家人補償」の名目で一、二三四、〇五八円を補償すべきものとしたことは当事者間に争いがなく、成立に争いない乙第一号証および弁論の全趣旨によれば、右裁決は右建物の賃借権の価格相当額をもつて右借家人補償の額としたものであることが認められるところ、これを原告の右建物賃借権の喪失に対する補償として合理的でないと考うべき根拠を見出すことはできない。

(二)  次に原告が右土地の庭園部分にその主張の樹木を所有していたこと、右裁決が原告に対し「立竹木移転補償」の名目で一六〇、七三〇円を補償すべきものとしたことは当事者間に争いがない。

そして、原告は右樹木の移植のため現実に一九九、〇一五円を支出したので、右裁決額はこれに三八、二八五円不足する旨を主張するが、原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第四二ないし第四四号証ならびに右尋問の結果によつても、原告が右樹木の移植のため一一三、〇〇〇円を支出したことが認められるに止まり、その支出が右裁決による補償額を超過することを認めるに足りる証拠はない。

(三)  また、原告が右建物に白金局加入の電話を設置していたこと、右裁決が原告に対し「工作物移転補償」の名目で三二、四七五円を補償すべきものとしたことは当事者間に争いがない。

そして、原告は右電話を他局に移転するため、右裁決額のほかに、電話加入権の評価差額一四〇、〇〇〇円および設備移転費四、二〇〇円の失費を生じた旨を主張する。しかし、前出乙第一号証によれば、電話設備移転費用四、二〇〇円は右裁決において「工作物移転補償」の一部として補償すべきものとされていることが認められる。また、原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第二一号証および右尋問の結果によると、原告は右建物からの移転に際し右電話加入権を売却し、あらたに大崎電話局加入の電話加入権を買受けたが、時価における差額の出費を要したことが認められるが、原告はこれにより右買受価格に相当する権利を取得したというべきであるから、右評価差額をもつて補償さるべき損失とみるには当らない(なお、前出甲第二一号証、成立に争いのない甲第二三号証の一ないし三の書込み以外の部分によれば、原告は大崎電話局加入の右電話加入権を買受けるまでの間にその電話の臨時使用料として少くとも一〇、四一七円を支払つたことが認められるが、右電話使用料は電話の使用に対する料金であつて、右土地の収用による損失とみるのは当らない。また、成立に争いのない甲第二二号証によれば、原告は大崎電話局加入の電話架設にあたり、利札付電信電話債券を引受け、その代金一四九、一〇〇円を支払つたことが認められるが、原告はこれにより右代金に相当する債券を取得したというべきであるから、右出費をもつて補償さるべき損失とみるのは当らない。)。

(四)  次に、原告が右建物に一般家財道具のほか原告主張の美術品が存したこと、右裁決が原告に対し「動産移転補償」の名目で五三、七三〇円を補償すべきものとしたことは当事者間に争いがない。

そして、原告は一般家財の移転に二七、三三〇円を支出したほか右美術品の移転に一〇〇、〇〇〇円を支出した旨を主張する。しかし、原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第二六ないし第三三号証ならびに右尋問の結果によれば、原告は右建物から一般家財道具および美術品を移転するため運搬費(人夫賃、梱包資材費を含む)として約三七、〇〇〇円を支出したほか、これを一時屋外に保管する仮施設設置のため、その材料購入費として約一三、九四五円を支出したことが認められるに止まり、原告が右動産の運搬のため、それ以上の支出をし、彼此あわせて右裁決による補償額を超過することを認めるに足りる証拠はない。もつとも、原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第二四号証ならびに右尋問の結果によれば、原告は右動産の移転に際し人夫に対する心付、間食購入代等、種々の雑費を支出したことが認められるが、前記認定のように右裁決は「移転雑費補償」の名目の損失補償を計上しているのであるから、右裁決が原告の支出した右雑費を動産移転補償の対象に加えなかつたのは異とするに足りない。付言すると、原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第三四ないし第三九号証ならびに右尋問の結果によれば、原告は昭和四〇年七月から同年一二月までの間、(前出乙第一号証によれば、右裁決が定めた収用の時期は同年四月二日であることが認められる。)、右動産の一部を他人方に寄託し、その代価として三〇、〇〇〇円を支払つたことが認められるが、原告が右建物から退去後、その所有動産保管のために要する支出はその居住のための出費と同様、右建物に対する賃借権喪失による損失にほかならないから、特段の事情がない限り、これに対する補償は前記借家人補償によつて賄わるべき性質のものであつて、動産移転の補償の対象となるべきものではない。

(五)  最後に前出乙第一号証によれば、右裁決が「家賃差額補償」および「移転雑費補償」の名目で補償すべきものとした金額は前記収用委員会において原告および起業者の間に争いのない見積額を基礎として定められたものであることが認められるとともに右金額を客観的に不合理とみるべき根拠もないから、右裁決額は正当であると認めるのが相当である。

(六)  そうだとすれば、右裁決による損失補償の金額はこれによつて賄いえない損失の発生を認めえない以上、結局正当と考えるほかはない。

三  よつて、その不当なることを前提とする原告の本訴請求は、いずれも理由がないとして、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 駒田駿太郎 小木曾競 海保寛)

(別紙省略)

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